遅筆の感想文

見たもの感じたことのアウトプットの場

キレイなだけではいられない、舞台『フリー・コミティッド』再演感想

究極のソーシャルディスタンス!ということで急に再演が発表されたフリコミ再演見に行ってきました。
成河さん自ら開演前に舞台に出てきて前説をしてくださて、毎回そこでのちょっとしたお話しが楽しみでもありました。開演直前に出てきてしゃべるの、冷静に考えたらすごいな…メンタル。

『フリー・コミティッド』
作:ベッキー・モード
翻訳:常田景子
演出:千葉哲也
出演:成河
東京公演:2020年11月13日(金)〜 30日(月)
会場:DDD青山クロスシアター

«あらすじ»
俳優業の傍ら超人気店の予約係としても働くサム。出勤すると誰もいないオフィスで電話が鳴り響いていて…。いるはずの同僚も居らず、1人でひっきりなしに鳴る電話に出るサム。個性豊かなお客との電話、俳優業のオーディションの行方、次々とおこるハプニングに上司からの無茶な要求……めいっぱい!手一杯!なニューヨーク発スタンダップコメディ


初演の時も思ったけど、落語スタイルにプラスで動きを加えて様々な人を演じ分けているなと。
最初は「なるほどそういう感じで演じ分けるのね」って感じなんだけど、だんだん成河さんが1人で演じてるのを忘れて、普通にサムと電話の向こうの人との会話を楽しんでるんだよね。でも後からいやあれ全部成河さんじゃん…って改めて気付く。いやすごいなほんと。
表情とか喋り方から電話の向こうの人の容姿が浮かんできて、何人かのキャラクターに愛着(?)もわいてくる。これは私の勝手な想像だけど、ジェリーは茶髪のキザなイケメンだし、ジャンクロードは黒髪をワックスで撫でつけて固めてて黒髭のイケメン、キャロランローゼンシュタインフィッシュバーンは金髪ボブの赤メガネか銀縁メガネの神経質そうなおばさん。勝手な想像だけど、なんかそういう容姿が浮かんでくるんだよね。

初演の細かいところちゃんと覚えてないんだけど、なんか印象が変わったなと思った。
心情や通話相手に合わせたBGMあったっけ?分かりやすくなったなって思った。

今回見終わって思った感想は、キレイなままではいられないんだなってこと。キレイなままでは現状を抜け出せないのかな。謎の男からの賄賂を受け取ってからどこか魂が抜けたかのように「キレイではない」駆け引きをして自分に有利な状況を掴み取っていくサム。
「結局はコネ」というジェリーの言葉はサムの心に残ったと思うし、そんなサムが私の心に残った。最後これまで散々マウントをとってきたジェリーにマウント返しするところ、ヴィクトリーポイントなんだと思うけど、なんかちょっと悲しいというかなんて言えばいいのか分からないけど、寂しい?気持ちになるんだよね…。キレイなままではいられないし、キレイなままじゃ現状を脱せないってのはわかってるんだけど。それでもどこかキレイでいてほしいっていうのがどこかにあるのかもしれない……。

胸を張れないキレイでない行為だったとしても、それは現状から抜け出すには必要なことだったんだよね。
歌を歌うためにジャンクロードに“交渉”を持ちかけ、鼻歌を歌いながら胸に薔薇を刺し出て行くサムは、爽快なラスト!というよりは他人に使われる側からの脱却、自分のために道を切り開くしたたかさを身につけて現場を脱したエンドだったなと。

今回配信があったからラストにかかるレディイズアトランプが成河さんご自身で歌う音源でした!!その音源売りませんか…?ステージゲートさん…。