遅筆の感想文

見たもの感じたことのアウトプットの場

過去を清算する、舞台『相対的浮世絵』感想

『相対的浮世絵』(2019)@本多劇場

10/26ソワレと千秋楽の11/17に見に行きました。

 

(本人に悪気があるかないかは別として)笑顔で責められてるようなちくちくした空気感。見ていて胸が苦しくなるような、後ろめたい気持ちになるような…。玉置玲央さんの場の空気を一瞬で変える演技が素晴らしかった…。

 

1回目見た後、遠山と達朗はなぜ出てきたのかをずっと考えてて、過去を許されたい智朗たちの願望だったのか?と考えて。「オバケ」の彼等にすべて吐き出して謝って許されて救われて前へ進む話?とひとまず結論を出したんだけど、2回目を見て結論が変わりました。

 

「こちら側」にとっても「あちら側」にとっても過去を清算する話

 

というのが私の中の結論です。

生きてる2人は過去と向き合って謝ることで前に進むことができた。

死んでる2人は今度は2人が裏切らなかったことで成仏できるってことなんじゃないかな。

個人の解釈の話ですけど。

 

遠山と達朗が20年も「こっち」に来れなかったのは、それだけ「恨み」が強かったからってことだよね。達朗は卓球始めたばっかりで火事にあったからな〜(ニュアンス)って感じで比較的穏やかな言い方だったから若くして死んだ恨みというよりは未練の方が強く感じたけど、遠山は未練通り越して恨みを感じた。選手として試合に出るために必死で練習してやっと選ばれたのに…のシーンとかも未練もそうだけど怒りを感じたし、じわじわと滲み出る黒いオーラが見えた。

 

それにしても伊礼彼方、クズな役が似合いすぎる。

高校から卓球部に入ったのにさらっと選手に選ばれるとことか、みんなの憧れのマドンナとさらっと結婚するところとか、結婚してるのに会社の若い子に手出してしかも会社のお金不正に引き出させるとか。説得力があるよね、スクールカースト一軍感あるもんな…。笑

私伊礼さんのこと、アメリカ人の嫁の才能にのまれて浮気する夫とか、ニュージャージーのチンピラとか、パリの警部殿とかでしか見たことなくて、こういう等身大な日本人の役は初めてだったんだけど、普通の人の演技もよかったなぁ。野村さんに対する愛想笑いとか深夜の同窓会の時の苦笑いとか、リアルだったな。

 

石田明さん演じる関の聞かれてもないのに何度も「俺は逃げてない」アピールする感じ、辛すぎた。

心の奥では自分も友達を置いて逃げてしまったことは分かってるけど、それを認めたくないがために20年間ずっとそう自分に言い聞かせてきたんだろうなきっと。

 

冒頭にも書いたけど、玉置玲央さん演じる遠山がとにかく凄かった。場の空気を変える演技が凄い。さっきまでニコニコ喋ってたのにそのままシームレスに緊張感のある空気に変わったりして。私、「ちぐはぐ」が好きで、今回の舞台みたいな、笑顔で楽しそうな口調なのに内容が不穏だったりそういう違和感が刺さる(?)んですよね。それがとっても上手だった!駄目だ上手く言葉にできない…語彙力の敗北…。

 

山本亮太さん演じる達朗の圧倒的弟感。上でも書いたけど、達朗からはあんまりマイナスの感情を感じなかったというか、卓球もっとちゃんとやりたかったなーとか純粋な未練で、その先の「だから死にたくなかった!」みたいな怒りは感じなかった。20年かけて「恨み」を消してやっと「こっち」に出てくることができた、の説得力。良い子だなあ。でもきっとそのピュアな感じが1番お兄ちゃんを苦しめると思う。罪悪感を感じてる智朗にとっては責められない方がキツかったんだろうな。だから「ラケット振るな!」とか強く当たったんだろうな。自分のせいで弟が死んだって自覚があるから。

山本亮太さん、カテコ後ニコニコして客席に手を振ってはけていって、アイドル…!ってなりました。

 

山西惇さんはほんと安定。この本における野村さんの存在意義をもっと考えたいなと思った(けどまだ結論が出てない)。死んでしまった人間はそこで時間が止まってしまうけど、生きてる人間は変わり続けてしまうっていうことを強調する存在でもあったのかな?奥さんが再婚する〜のエピソードとかね。1番面白いのはやっぱり思い出話!とかね。「こっち」にいすぎてしまっても、そのギャップで「恨み」が発生してしまうかもしれない…。そういう意味でも遠山たちは帰ることにしたのかな。

 

本多劇場初めてだったんですけど、前方ブロックほぼ傾斜なくてびっくりした。ちなみに斜め前に男性が座った時は舞台下手はサウンドオンリーになりました。通路挟んで後ろは段差しっかりついてる感じだったかな?

異種格闘技とまではいかないけど、それぞれのフィールドから集まってきた5人のお芝居、面白かったです。