遅筆の感想文

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征服欲と執着の行き着く果て。ミュージカル『スリルミー』(成河福士ペア)感想

このご時世でも人気演目×200台キャパ劇場はチケ難公演になるもので。なんとか東京公演3ペア1回ずつと愛知公演成福1公演のチケットが確保でき、なんとかすべて見に行けたので久々にブログ書こうかなと。(配信は時間の都合で成福とにろまり見ました。松山もう一回見たかった…)。東京公演はわりと遠い記憶で当時の覚書しかないので記憶が捏造されてる可能性はある。幻覚強め。

 

ミュージカル『スリル・ミー』

・キャスト

田代万里生(私役)×新納慎也(彼役)/
成河(私役)×福士誠治(彼役)/
松岡広大(私役)×山崎大輝(彼役)

ピアニスト:朴勝哲 落合崇史 篠塚祐伴

・スタッフ

原作・脚本・音楽:Stephen Dolginoff
翻訳・訳詞:松田直行
演出:栗山民也

音楽監督:落合崇史      
美術:伊藤雅子
照明:勝柴次朗
音響:山本浩一      
衣裳:前田文子
ヘアメイク:鎌田直樹
歌唱指導:伊藤和美     
振付:田井中智子      
演出助手:坪井彰宏/田中麻衣子
舞台監督:田中伸幸/松井啓悟

 

前提に、スリルミーは2018年公演の成河・福士ペアが初見でした。当時はあまりの緊迫感に集中しすぎたのか息を止めがちだったみたいで、終演後立ち上がった瞬間酸欠でふらふらになった思い出。当時の皆さんと同じように戦慄の成福ペアにてスリルミーデビューでした。そのあと柿松を見てその違いに愕然。そこで気付いちゃったんですよね、この演目は特に、ペアごとに全然違うって。

 

◆成河「私」×福士「彼」ペア所感

東京公演序盤、圧倒的パワーゲーム感があった。マウント合戦。彼は私の“欲しい言葉”を言って、私は彼の“嫌な言葉”を言って、気を引いて優位に立つ。相手を反応させるワードをかぎかっこ付けてるかのように強調して言うのが印象的だった。「弟」「デート」「裏切り」「レイ」とか。とにかくお互いが相手よりも優位に立つためにマウントを取り合ってるという感じがした。優位に立って、自分の思い通りにしたいという一種の征服欲のようなものなのかな。そんなものを感じた。そして成河私の何が何でも彼を自分のものにするという執着のようなものも凄くて、タイトルにもつけたけど、成福ペアは征服欲と執着の行き着く果てという感じだったなぁ。

福士彼は相変わらず私のことガン無視で自分の話したいことだけしゃべって俺様な感じだけど、前回よりはちゃんとコミュニケーション取れてると言うか、人間だった。スリーピーススーツが本当に美しい。立ってるだけで美。ほんとスリルミーの福士誠治のビジュアルなんなん?タバコに火つけるだけでかっこいい。本当にあの福士彼の美しさは何なのか、2018年から未だに答えが見つからない。とにかく一挙一動いちいちかっこよく美しいんだよなぁ。これは「みんな彼に夢中」だし「友達がたくさんいる」彼だわ。女の子はもちろん同性にも好かれそう。

そしてキスについて。コロナだからどうなるかと思ってたけど、私のこと振り向かせ様に軽く押し付けるようなキスして私が固まったら手を頬に添えて角度変えて3、4回深いキスして、私が乗ってきて手を添えようとしたらパッと離れちゃう。私はここの福士彼のキスのこと少女漫画って呼んでる。配信では顔離した後の、成河私の肩越しに見る「これで満足だろ?」って顔が抜かれてて素晴らしかった。「これで満足だろ?」ってセリフ言う前から「これで満足だろ?」って顔してるんだわ。見下すように顎を上げた角度が多かった福士彼。冷たいとこがまた彼の魅力を助長させてる気がする。

成河私も前回より人間になってた。いやもちろん怖いんだけど(眼鏡がこんなに早く見つかるとは驚きましたのニチャアて笑顔はマジで夢に出るレベル)。2018年は迷わずあのラストへ突き進んだ感あったけど、今回は「彼と一緒にいる」という目的に向かってその場その場で策を打っていたように感じた。彼がことごとく悪い方向に向かう選択肢選んじゃうから…。二人とも絞首刑になるっていう最悪のケースは逃れられたけど、覚悟をしてたとは思うんだよね。それがあの涙を浮かべた笑みでの「君と一緒に死ねるならそれも本望だ」なのかなって。普通の人間は死にたくないはずなんだけど、その死さえも「彼と一緒なら」という条件付きではあるけど受け入れてしまう成河私はやっぱり超人になったんだな。

『超人』で2018年は子供殺した後気が動転して大パニック✩︎舞台装置の隙間に入り込んでぴえんぴえん怯えまくって大暴走だったのに、今回はもう呆然と言った感じで心ここに在らずだった。(彼だけめちゃくちゃ興奮してて楽しそうだった。)だんだん自分のやったことを分かってきて、彼に血に染まったロープ投げられて怯えて瓶を持つ手が震えてくるっていうのが良かった。

二人とも歌は限りなくセリフに近くて、でも歌い上げるところ、例えば『やさしい炎』とかはちゃんと歌い上げて、本当にめちゃくちゃ良かった。ぽろっと口から溢れる言葉とかを歌で表現すると、ザ・歌って感じじゃなくなっちゃうんだけど、でもちゃんと演技として成立してるから集中力が途切れないと言うか。(突然音外されると我に帰る的なアレはなかった)。『僕の眼鏡』でのパニックになる演技(歌)もすごい。歌なんだけどメロディ通りとオクターブ上げが混ざってそれがすごくパニック感あって、でもちゃんと歌としても成立してて、でもセリフで…もうなんかまじすごいなって。表現力、何?好きじゃん…。そしてやっぱり二人の声の相性がよすぎる。なんでCD出さないんですか?『やさしい炎』の一拍おいてからの「赤く、赤く〜」がぴったりすぎて凄かった。あと基本的にこのナンバーの声の重なり具合、深くて低めの福士彼の歌声と高く鋭い成河私の歌声のハモリが本当に相性良くて……好き。『脅迫状』のピッタリそろったユニゾン(?)もほんと好き。なんであんなにピッタリ合うんだろう。

これは愛知公演見て思ったんだけど、『やさしい炎』で前に出てきて歌うところ、後ろから抱きしめられて自らを抱きしめる→鳥のように羽ばたくところで初めて、“抑圧からの解放”を感じた。あの炎を見てる時だけは、スリルを感じてる時だけは、“社会”から自由になってる、だからスリルを追い続けてしまう、みたいな。

『僕と組んで』の彼、これまで通り私が反応するであろうワード(「レイ」とか助けてくれとか必要とか)を散りばめながら話を進めていくんだけど、全く目が合わなくてちょっと焦って近づいたりする。それでやっと目があったら得意げに?満足げにまたワードを並べ立てるんだけどプイッて顔そらされちゃってえっ!てなる。わざわざ回り込んで必死にすがってキスもして…っていうのが、彼も「ゲーム」をしていたんだなってなんか実感した。ここの彼の必死感。この時点で成河私、勝利だよなぁ…。そのあとの成河私の「分かったよ 何でもしてあげるね」の表情、あれなに?毎回あの表情と声に感情ぐちゃぐちゃにされたんだけど、この気持ちが何なのか未だに解釈できない…。

私の「ゲーム」感を特に実感したのはネタバラシ後。福士彼の「だがこれから君は孤独だ一人」にも全く動じず笑みを浮かべながら首を振って「いや離れられない」、変だよ青ざめて〜で彼を階段へ追いやった?あと正面向いて完全に勝利の笑みを浮かべていた。あれは勝利顔。彼を自分のものにできてご満悦。これは愛知公演。ちなみに配信を見た後のメモには、「死刑になってたら?」「一緒に死ねるならそれも悪くない」のところの表情。めっちゃ笑ってるんだけど目に涙が溜まってて泣いてて、なんか(あ、いっちゃってんな)って思った。人間やめた的な意味で。彼の「狂ったのか?」もあながち間違えじゃないのかも。と残されていた。

 

◆成福ペアのみのセリフについて

私が分かった範囲では二箇所別のペアとセリフが違う箇所があった。

一つ目は『計画』の「あいつ殺せば」「親は悲しむ」が「あいつ殺せば」「君は罪人」の箇所。このスタンダードな方のセリフ(歌詞)は、彼の意識している親=父親を出すことによって、そんなことしたら父親に認められることは万が一にもなくなっちゃうよってことを示唆してるのかなって思うんだけど、それを自分が罪を負うことになるよって言う方向に変更したのは福士彼が“父親に”認められる(愛をもらう)ことよりも“自分が”認められることの比重が大きかったからかな…?と今思いついた(半日このことについて考えてたけど結論出なかったから勢い)。新納彼は「この街破壊してやる!」とか「社会が許さないことをやってのけてこそ超人(大意)」ってところに比重があったと思ったから…。成河私は必死で彼を止めるために彼に刺さりそうな(彼が納得しそうな)言葉を選びそうなので。まあ結果殺人路線は変更できなかったんだけどね。文章書きながらこの説が論理破綻してることに気付いたから次に行きます。

二つ目は、細かいところ違うかもだけど「怖いのか?」と彼が煽るところが「僕を怖がらせたいの?」「それが欲しいんだろ?ん?」のところ。セリフ細かいところ多分違います。これは成福ペアのスリル追求度の高さを表現するためかな〜と。それか、ここの彼の「ん?」の破壊力が最強クラスなので彼の魅力を見せつけてきただけかもしれん(違います)。福士彼、結構「ん?」って表情するけどもれなくどれも破壊力が高い。ありがとうございます。

 

◆他ペアとの違い

・殺人を計画する彼に対する私

万里生私は、新納彼の「思いつき」に対してかなり早い段階(殺人ってワード出てすぐ)で深刻に受け止めて止めに入ってた。成河私は、はいはい…って感じで軽く受け流してたら福士彼がどんどん熱くなっていっちゃって、本気だって気付いた時にはもう遅くて必死に説得するけど殺人をやめさせるまでには至らなかったって感じ

・血のサイン

『契約書』で血でサインする時に彼の指の血ぬぐうの成福だけだった…当然のように指を差し出す福士彼と当然のようにハンカチで血をぬぐう成河私…。ここのシーン地味に好きだから、他のペア見た時彼は血拭かなくて大丈夫?!血で汚れちゃうよ?!って思ってしまった。

・「お前がいなきゃ、ダメなんだ」

新納彼の「お前がいなきゃダメなんだ」はわりと本心のように聞こえた。新納彼はさ、万里生私のこと必要としてるよね。万里生私といる時は自分らしくいられるとかじゃないかなぁ…。万里生私を抱きしめる時とかも頭に頬を寄せたり首元に顔を埋めたり、大切にしてる感があった。福士彼は成河私のこと試すような顔してかぎかっこつけて棒読みしてるよね。まあ棒読みでもいいから福士彼にお前がいなきゃダメなんだって言われたさはある。

・私のインキャ感

松岡私は周りにいじめられるタイプの頭のいい優秀なインキャだった。成河私は距離置かれて孤立するタイプの優秀なオタク。万里生私はね、インキャじゃない!優等生。

・彼のカリスマ性

山崎彼メンヘラに好かれそう。そして上手く扱えなくって執着されそう。福士彼とか新納彼はメンヘラな女の子も上手くいなせる。新納彼は同性の信奉者が多そう。福士彼は男女同じくらい周りにいそう。山崎彼は女の子に囲まれてそう。

 

◆他ペア所感

・にろまりペア

愛じゃん。どうしてこうなってしまったんだと頭を抱えた。スリルミーを見て初めて涙こぼれた。グッと怒りを抑えて目に涙を溜めて「どうせ弟の誕生日だろ」っていう新納彼が刺さっちゃった。仮面が厚いなって。仮面を外せるの、私の前だけだったんだなって感じだったから、彼も私のことを必要としてたよね。それでも完全に自分のものにならなきゃ嫌だったのかな、私は。選択肢次第ではあの結末は避けられたのではと思わされる。新納彼、友達多いけど孤独そう。何でも持ってるけど、本当に欲しいものは持ってない。彼が私のこと必要としてる感じだったけど見捨てようとしたのは、彼の中での死の恐怖が上回ったからで、だから「一緒に死ねるならそれも悪くない」って答えた私は彼の考える常識を上回った、だから超人として認めた。あの負けたよ、と言った笑みはそういうことなんじゃないかなと思った。あのネタばらしシーンで考え込んだ後笑ったのかなり印象的だった。福士彼はドン引きでもはや恐怖すら感じてるまであったから…。

ねえ、新納彼のキスの仕方何???不意打ちしてから少し顔離して、「あ」の口作って口開けろって促してた。何あれ?!強すぎる……。血の契約の時の挑発するように万里生私の顔を見ながら指先を切る新納彼もセクシーですね…。セクシーといえば万里生私のサスペンダー。なに?あの肩入れたサスペンダーの脱ぎ方…あれは…だめですよ。

『スポーツカー』の誘拐時ボロが出てない選手権あったら多分新納彼が優勝。福士彼も爽やかお兄さんなんだけど、新納彼はほんとボロが出てないんだよ。冒頭の公園での万里生私、「大人っぽくなった✩︎」で双眼鏡覗いてんのなんか笑った。(かわいいね)あの距離で覗いたら逆に見えなくない?万里生私、捨てられた子犬みたいな表情するから彼もいじめがいありそう(愛)。ほんとかわいいね万里生私…。万里生私は執着とかじゃなくて突き詰めた愛って感じだった。公式キャッチコピーの「究極の愛」はほんと的を射てると思う。

 

・松山ペア

山崎彼、若さから来る全能感すごくて、でも脆さがあった。私のこと手玉に取るってよりは食われてたなぁという印象。山崎彼のアフレイド、声を荒らげるって感じじゃなくて死にたくないも叫ぶんじゃなくてうずくまりながら「死にたくない…ッ」ってクッて後悔してる感じ。悪い意味じゃなく小さい。自分のやったことに対して、いい子すぎたというか普通だったというか、本当に若さゆえの全能感で勢いでやってしまったんだな…。松山私はすっごく粘着質だった。成河私とはまた違った感じの執着……やっぱり粘着質って言葉の方があうかな。大きなおめめが爛々と?ギラギラと?光る感じ。「もう我慢できない」一番気持ち悪い大会あったら優勝。すべて褒め言葉です。

 

◆ ◆ ◆

途中公演中止などあったけど、その度トークショーを配信してくださったり、まさかの本編配信をしてくださったり、本当にありがとうございました。特に配信はびっくりした。できるんだ!って。アーカイブなしだし一般的には少しお値段するけど、ツイッターとか観測した限りかなりの人が見てくれたんだなって思ったし、チケット戦争に参戦するほどでもないけど、もしくはあんまり知らないけど見てみようかなって人もたくさんいたんだなって思った。そういう人には次回再演したらぜひ生で見てほしい。一緒にあのひりひりとした空間を共有したい。再演待ってます!

あと、何度でもいいますが、2021年版のCD待ってますので!ホリプロちゃん!!!